HARADA TAKANOBU
マーケティング税理士 原田 尚信
- 浅沼みらい税理士法人社員税理士
- 税理士・行政書士・M&Aシニアエキスパート
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マーケティング税理士への道のり
私は1973年生まれ、いわゆる第二次ベビーブーム世代です。社会に出てから今日まで、日本経済は長く「デフレのトンネル」の中にありました。
税理士として多くの企業を見てきましたが、特に製造業やサービス業では、原価管理や固定費の削減によって、いかに利益を確保するかが経営の大きなテーマでした。
変動損益計算書を見ながら、原材料費、人件費、その他の固定費を見直す。デフレの時代には、販売価格を上げることは容易ではありません。一方、コスト削減は自社の努力によってある程度コントロールできます。そのため、売上を伸ばすよりも、コストを削減して利益を守ることが現実的な経営手法だったのだと思います。
しかし、何十年にもわたってコスト削減を続ければ、当然ながら限界があります。削るべきものを削り、効率化できるところまで効率化した企業にとって、さらに利益を増やすためには、今度は「売上を伸ばす」ことが必要になります。
そして現在、物価や人件費、原材料費などが上昇する環境となり、これまでの「守りの経営」だけでは企業を維持することさえ難しくなっています。これからは、売値を守り、売上を伸ばし、市場を広げていく「伸ばす経営」へと発想を転換する必要があるのではないでしょうか。そのとき経営者の方々が直面するのが、「どうすれば売上を伸ばせるのか」という問題です。
私がこの問題を考えるようになった大きなきっかけが、「問題解決倶楽部」での弓削先生との出会いでした。
弓削先生に出会わなければ、私は税務を中心とした税理士として終わっていたと思います。
それまで私が読む本といえば税務の専門書が中心で、もともと中国古典が好きだったこともあり、『貞観政要』や『孫子』などを読むことが多くありました。ところが、弓削先生との出会いをきっかけに、マーケティングだけでなく、心理学、行動科学、歴史、文学など、さまざまな分野に興味を持つようになりました。
そこで感じたのは、マーケティングとは単なる広告や販売促進の技術ではないということです。 人はなぜその商品を選ぶのか。なぜある会社は選ばれ、別の会社は選ばれないのか。マーケティングを理解することは、突き詰めれば「人間を理解すること」なのではないか。
そう考えるようになってから、仕事だけでなく、自分自身の世界にも大きな広がりが生まれました。
マーケティング税理士としての今後
私は、マーケティング税理士になることを、税務・会計から離れることだとは考えていません。むしろ、これまで培ってきた税務・会計の専門性にマーケティングという視点を加えることで、経営者の方々に新しい価値を提供できるのではないかと考えています。
例えば、「売上を1,000万円増やしたら利益はいくら増えるのか」「値上げによって、どの程度のお客様が離れても利益を維持できるのか」「新規顧客を何件獲得すれば、営業や広告への投資を回収できるのか」。こうした問いには、マーケティングだけでも、会計だけでも十分に答えることはできません。
「誰に、何を、どのように提供するのか」というマーケティングの視点と、「その結果、会社にどれだけの利益が残るのか」という会計の視点。この二つを組み合わせることに、税理士ならではの経営支援の可能性があると考えています。
マーケティングを学ぶ中で、私にとって特に印象的だったのが、バイロン・シャープ氏の『ブランディングの科学』などで示されている「ダブルジョパディの法則」との出会いでした。それまで私は、企業が成長するためには、既存のお客様との関係を深め、いわゆる「ファン」を増やすことが重要だと漠然と考えていました。しかし、ダブルジョパディの法則に触れ、市場シェアの低い企業は顧客数が少ないだけでなく、購買頻度も低くなるという市場構造の見方を知り、経営を見る視点が変わりました。「既存のお客様にもっと買ってもらう」だけではなく、まだ自社を選んでいない、より多くのお客様に知ってもらい、選択肢の一つに入れてもらう。その積み重ねが市場シェアの拡大につながる。
この考え方は、私にとって非常に新鮮でした。
そして同時に、税理士として日々見ている売上や利益の数字を、単なる結果としてではなく、「顧客数」「購買行動」「市場シェア」といったマーケティングの視点から読み直すことの重要性にも気づきました。税務・会計の数字とマーケティングを結びつけることで、これまでとは違った角度から企業の成長を考えることができる。
そこに、私が目指す「マーケティング税理士」の大きな可能性があると感じています。
全国の経営者の方々へ一言
日本の中小企業は、非常に厳しい時代を乗り越えてきました。
売上が伸びない中でも、人件費や経費を見直し、業務を効率化し、懸命に利益を確保してきました。その努力が、今日まで企業を支えてきた大きな力だったと思います。
しかし、コスト削減には限界があります。
だからこそ、私は経営者の皆様に、あえて申し上げたいと思います。
「もう一度、売上を伸ばすことに挑戦してみませんか。」
もちろん、闇雲に広告費や人員を増やせばよいということではありません。
自社の商品やサービスを必要としているのは誰なのか。どのような価値を提供できるのか。なぜ競合ではなく、自社が選ばれるのか。そして、どの市場で成長していくのか。
こうした問いを考え、その結果を会計数字によって検証する。
私は、そこにマーケティングと税務・会計を組み合わせる大きな意義があると考えています。決算書には売上や利益という結果が記されています。しかし、その数字の向こう側には、お客様がいて、社員がいて、商品があり、地域があり、そして経営者の方の思いがあります。
数字だけを見るのではなく、その数字が生まれた背景をマーケティングの視点から考えることで、新たな成長の可能性が見えてくるのではないでしょうか。
「守る経営」から「守りも堅め伸ばす経営」へ。
私は、経営者の皆様とともに、その可能性を考えていきたいと思っています。
全国の税理士や会計士の先生方へ一言
税理士や会計士は、企業の数字を継続的かつ身近に見ることのできる専門家です。
売上、粗利益、人件費、固定費、利益、キャッシュフロー。私たちは、企業の経営状態を数字から読み取ることができます。
私は、この「数字を見る力」にマーケティングという視点を加えることで、私たちの専門性はさらに大きな価値を持つのではないかと思っています。
私自身、弓削先生との出会いがなければ、マーケティングを学ぶことも、専門外のさまざまな分野に関心を持つこともなかったと思います。
専門を深めることはもちろん大切です。しかし、ときには専門の外に一歩出てみる。そこで新しい知識や考え方に触れることで、自分の専門性を別の角度から見直すことができるのではないでしょうか。
そして、私たちが持っている数字の知識は、決して過去を説明するためだけのものではありません。
「売上を増やすにはどうすればよいのか」
「どのお客様を大切にすればよいのか」
「値上げをしても大丈夫なのか」
「どこに投資すればよいのか」
こうした未来に向けた問いに対して、税務・会計の専門家だからこそ提供できる答えがあります。 マーケティングを学んで私が感じたのは、「税理士だからこそできるマーケティング」があるということです。
税務・会計を土台としながら、マーケティング、人間の心理、行動など、さまざまな分野から学び続ける。そして、企業の過去を説明するだけではなく、その企業の未来を経営者の方とともに考える。それが、これからの税理士・会計士の仕事の一つの可能性なのではないかと思っています。
税務と共に経営を伸ばす。
過去の説明だけから、未来の創造へ。
私自身も学び続けながら、企業を「守る」だけではなく、「成長させる」ことをともに考えられる税理士を目指していきたいと思います。
